のらねこを眺めていた頃
私がお外のねこちゃん(のらねこ)を気になり始めたきっかけは、もう20年以上前にさかのぼります。会社の4階廊下の窓から眺めることが出来る風景…そこには茶トラに白柄の仲良しな2匹の猫が大体同じ時間帯に現れて何か(誰か)を待っている様子でした。目の前は病院のお庭、そこへゴミ収集車がくる時間…ゴミ収集車のおじさんがゴミの残飯から、ご飯を貰える時間です。ねこちゃん達は、嬉しそうに尻尾をあげて近寄り食べ始めます。
そんな風景を見ることが楽しみになって来た頃、その日は1匹しか待っていなかったのでどうしたものか?と、とても気になって、仕事の帰りに少し失礼して病院の敷地へ入ってみると、遠目からはゲージの様な物にタオルがひいてあり、カリカリが入っていました。ねこちゃんも1匹入っています。茶白のねこちゃんです。
私と,もう一人の会社の先輩Tさんと「ちゃんとカリカリも貰ってゲージも置いてあるんだね、良かった」と話しながら帰ります。
少しも良くなかった…
でも…少しも良くなかったのです。
次の日から、2匹で過ごす姿は見ることは無く、1匹だけとなりました。2匹とも同じ柄だったので交互に来ているのか?と都合のいい解釈を勝手にしてた自分に後悔しています。その数日後、1匹のねこちゃんも姿を現さず、何かがおかしいよね?気になるね?と、Tさんと仕事終わりに、また、病院の敷地内へ入ってみると…
この間と同じ風景…でも違っていたのは、茶白柄のねこちゃんがゲージの中で「ニャーニャー」と鳴き続け、外へ出たくても出られない様子、咄嗟に駆け寄りよく見てみると細長いゲージではなく、今思えば捕獲器だったのです。20年前には捕獲器は珍しく見たことも無い物で、それは嫌な感覚でした。
一度入ったら出られないようになっています。何これ…でも出さないと!と思い、ねこちゃんを逃がしました。あの時あの瞬間の、嫌悪感は今でも忘れられません。先日入っていたねこちゃんは…少しも良くなかったのです。捕獲器で捕獲され何処へ連れていかれたのか?生きているのか?
噂によるとその病院、のらねこを捕獲して病院の焼却炉で処分していた。と聞き、怒り、悲しみ、憎み、恨み、そして後悔の気持ちがずっとずっとついて回ります。あくまでも噂なのですが…あれ以来、茶白柄のねこちゃんこは1匹しか見ることはありませんでした。2匹で仲良く待っている姿は2度と見ることはできません。
人の命を助ける病院が、生き物に対して余りにも酷すぎる、どうして温かい目で見てあげられないのか?のらねこだというだけで嫌がられ邪魔者扱いされる…のらねこを迷惑だと考えている人間が沢山いて、簡単に殺されてしまう事も悲しすぎる事実なのです。
のらねこちゃんは「ちぃちゃん」
私たちが逃がしたねこちゃんは、ゴミ収集車のおじさんが「ちぃちゃん」と呼んでいました。とても可愛い綺麗な女の子です。そうです、女の子なので半年後には子供を産みます…
ちぃちゃんは子供を産みました。初めての育児だったと思います。とても綺麗だった毛並みも汚くなり、見る見る痩せていきました。当時の私達は見守ることしか出来なかった。相変わらずゴミ収集車のおじさんが残飯を置いていく、何をあげているのか会社からでは、よくわからない。
ちぃちゃんはお腹を満たすことが出来たのかな?何匹生まれたのかな?ちぃちゃんは汚いのらねこになっていった。
ひと月ほどすると、小さな子猫が2匹ちぃちゃんの傍に居た。さびがらの子猫、とっても可愛い天使、大切な命をちぃちゃんお母さんは一生懸命に育てていた。何匹生まれたんだろうか…きっと2匹しか、生き延びる事が出来なかったと思う。
ちぃちゃんは相変わらず汚い…過酷なお外の世界で新米ママさんのちぃちゃんは我が子を守っていた。
新米ママさん「ちぃちゃん」の母性愛
ねこは、生き物の中でも母性愛が豊かで、わが身を削り子育てをするそうです。ちぃちゃんも新米ママさんなりに、一生懸命2匹の子猫を育てていました。ゴミ収集車のおじさんが来ない日は、かなりの長い時間を待ち続けていました。見かねて病院の警備員さんが缶詰めをあげてくれていて、ホッとしていました。それでも、まだ足りないのか待ち続けています。
仕事が終わり私達は缶詰めを買って、ちぃちゃんの元へ…大きめの缶詰め一つを容器に移し差し出すも、私達に警戒して近づいてくれないので、離れて見守っていると、そろそろと缶詰めに近づき一口銜えて子猫に運びます。何度か運び、子猫が食べるのを傍でずっと見守っています。
ちぃちゃんの口元からは、よだれが出ていて、子猫たちが残したほんの少しの缶詰めをガツガツと食べ容器は洗ったように綺麗になっていました。ちぃちゃんの瘦せた身体とボサボサの毛を眺めて、悲しい気持ちになりました。
本当はちぃちゃんも沢山の缶詰めを食べたかったのに、我が子に食べさせて自分は我慢して、身体はボロボロで…ちぃちゃんの母性愛は人間にも負けないほど立派です。のらねこの子育ては過酷すぎる、ただ、餌をあげていればいいなんて思ってはいけないと、心の底から悲しみがこみ上げてきました。
眺めているだけでは、いけないこと
警戒心が人一倍強い、ちぃちゃんは子育て中はそれ以上に警戒心が強くなる為、私達にはちぃちゃんにご飯をあげるのもひと苦労…本当は私達が捕獲して避妊手術をしたかったけれど、頭の良いちぃちゃんは捕まらない…そこで、いつものゴミ収集車のおじさんに少し時間をもらい、ちぃちゃんの避妊手術を提案してみた。
おじさんなら捕まえることができるから!おじさんは快く応じてくれた…しかし、実行してもらえずにちぃちゃんは、また妊娠、出産を繰り返した。
ちいちゃんの一番初めの子猫も半年が過ぎ2匹ともさびがらの女の子…数か月後に妊娠、出産となるのは当たり前の事でした。猫の繫殖力は恐ろしく、でも、自然の成り行きで猫に罪はない…ただただ、子供を産み、一生懸命育てること、これが自然の世界…誰かがこの蛇口を閉めない限り、不幸なのらねこが増えるばかり、もう、眺めているだけではいけないんだ!
これからどうする?のらねこに対する知識が無い私達はボランティア「ねこだすけ」さんを訪ねて、のらねこについて、色々と教えてもらった。
次回へ続く
はじめの一歩
こうして、私達ののらねこちゃんとの、はじめの一歩が始まった!今、私達に出来る事をしよう。目の前のちぃちゃんを、その子猫達に手を差し伸べよう!
今でいう地域猫活動(TNR)だったと思います。手術をして、小さな子猫は里親さんを探して、毎日ご飯を届けて、具合が悪い時は病院へ連れていける仔は連れていき、お薬で大丈夫な仔はお薬飲ませて、結果的には20年ほど掛かりましたが、そこにいたのらねこちゃん達は居なくなりました。TNRは絶対に必要です。
これ以上のらねこを増やさないためにも、国が、獣医師が先頭を走って欲しい!ボランティアさんだけに頼らずに!と思いませんか?
お母さんのらねこのお話
♡とても大切な事…一人でも多くの人に観て感じ取ってほしい♡
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